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事例4 東京都世田谷区T氏宅
    騒音を出さないシステム

 

「低圧蓄熱調整契約」の床暖房、給湯機能の蓄熱式温水器採用第1号。

平成8年の住宅新築時に電気温水器式の床暖房を採用。

この事例の「T氏住宅の新築場所」は東京都世田谷区経堂の住宅地です。T氏は新築する当時から、新築場所が静かな住宅地なので既に住んでいる人達の為にも迷惑が掛からない様にする為に、絶対に騒音を出さないシステムが良いと思っていました。その上T氏が環境に関する仕事に携わっている関係もあり、夜間電力を使用するシステムを利用したいと考えていました。

住宅の規模と床暖房の敷設面積及び使用状況。

建物は木造の2階建てで床面積は40坪程度です。床暖房の敷設面積は1階と2階の合計で約14坪です。平成8年当時は子供が小さかったので、2階のLDKの約8坪程度を朝の6時頃から夜の9時頃までの15時間程度は暖房していました。寝室の暖房は夕方の6時頃から朝の7時頃までです。リビングの中に子供の勉強や遊ぶコーナーが設けられて、子供達も家族の目が届く範囲で生活していましたが、子供が成長してからは勉強にも子供室を使う様になり使用する寝室も増えて3室になりました。

新築以来、その面積の暖房と給湯の熱量を「低圧蓄熱調整契約」の4kW契約で賄っていましたが近年は、暖房と同時に給湯の使用量も増えて熱量の増加の必要性が出ていました。

温水蓄熱式の「低圧蓄熱調整契約」の第1号をT氏は地域の第1号と考えた。

T氏も新築の時からこの電力料金メニューの第1号と聞いて承知していましたが、世田谷区での第1号ぐらいに思っていました。その後、暫くしてから全国での第1号と知って驚いていました。当然に管轄する電力会社でも初めてと言う事も有り、このT氏宅の工事の時には電力会社(東京電力(株))から大勢の社員の方々が見学に来ました。

この「低圧蓄熱調整契約」はT氏が新築を計画していた平成7年の4月に規制緩和で、一般の住宅にも「低圧電力(3相200V)」が引かれる様になり、それに伴い一般住宅でも「低圧蓄熱調整契約」適用される事になり、T氏宅で初めて実現しました。

「低圧蓄熱調整契約」と「割引控除」に付いて。

「低圧電力」は一般には「動力:(どうりょく)」とも言われている電力で、それ迄は主に工場や大型の店舗等で使用されていたので業務用専用の電力と考えられていました。普通の「深夜電力」が夜の11時から朝の7時迄の「8時間の割引時間」で有るのに対して、「低圧蓄熱調整契約」は夜の10時〜朝の8時迄の「10時間の割引時間」が有ります。その上にその割引時間中の料金が3.41円/kWと非常に割安である事と、昼間の電力も10.50 円/kW(平成8年当時の価格)と普通の電力料金と比較して安いのが魅力です。

「割引控除」

しかし、この「低圧蓄熱調整契約」の制度は夜間の安い電力を蓄熱して翌日の昼間の電力を削減する目的の「電力料金メニュー」ですから、夜間の電力をそのまま利用する事は原則的に出来ません。その為に、夜間営業している業種では適用されない場合が有ります。一般住宅の場合は、夜間の使用率を10%程度と看做(みな)して貰い10%程度を「割引控除」を適用する例が殆どです。

「割引控除」と言うと消費者にメリットが有る様に受け取る向きが有りますが、この場合は逆で、「割引控除」は電力会社側から見ての用語です。易しく言えば「夜間の使用分の中で10%分は割引が無く、昼間の電力料金を適用する」と言う契約です。住宅の場合は10%の割引控除が一般的ですが、学校や保育園、事務所等で夜間の使用が無い場合は「割引控除」が無く100%の割引が受けられます。

「低圧蓄熱調整契約」の特徴。

このメニューは非常に安価な電力料金が適用されるため、灯油やガスに代替するエネルギーとしては最適ですが、注意を要するのは969円/kW(消費税別)と基本料金が比較的高い事です。暖房や給湯を多く使用する時期には最適ですが、暖房や給湯負荷が少なくなるシーズンには基本料金の比率が多くなります。勿論、冷房迄「低圧蓄熱調整契約」で行うと年間のコストダウンは大きくなりますが、一般の中小住宅での冷房はエアコンで間に合わせる例が多いために、その夏期のシーズンの対策も必要になります。しかし、T氏宅では「低圧蓄熱調整契約」のままでも、年間のランニングコストもガスに比較して安いので敢て夏期の対策をしないで11年間「低圧蓄熱調整契約」だけで使用していました。

今回の増設では「電化上手」の電力料金メニューを採用する。

新築後10年経過すると子供さんが大きくなり、熱の消費量が増えて来ました。T氏宅はオール電化でなく、都市ガスも入っていますからガスとの併用(ハイブリッド方式)も検討しましたが、結局最も経済効果が大きい方式を選択しました。この「低圧蓄熱調整契約」の電力料金メニューも契約容量が変更できますから、低圧電力の増加も検討しましたが、この10年間に電力料金メニューも改正され平成8年当時には無かった「電化上手(東京電力(株)の例)」と言うメニューが出て来たのでその電力料金メニューを利用する事にしました。このメニューでは10kW迄が2,100円と基本料金が安く押さえられて、その上電気温水器の契約容量を実際の電気容量の10%として扱って貰えるので消費者に取り非常に有利な契約方式です。

そこで熱量の不足分は「電化上手」のメニューを利用した夜間電力を利用する事にしました。この効果は下記の通りです。

(1) 従量電灯の基本料金が安くなる.

(2) ランニングコストが「電化上手」の効果で安くなる。

(3)暖房のピーク以外のシーズンの「低圧電力」の基本料金が半額になる。

等々の効果で都市ガスとの比較で60%近いコストダウンになります。

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