グランドデザインコンテスト受賞作品

第2回最優秀賞

太陽電池の丘

太陽電池の丘

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基本情報

  ■作品名 太陽電池の丘
  ■所在地 千葉県柏市
  ■用 途 東京大学柏キャンバス内「公共広場」
  ■設計・監理 東京大学キャンパス計画室 
         清家剛 東京大学施設・資産系
  ■応募者 東京大学大学院新領域創成科学研究科 
        特任助教授 日高 仁
  ■発電能力 4126W
  ■主な用途 ポスターケース照明、広場の近隣用街灯、
        災害時用電源他。
  ■メーカー名 硝子建材エンジニアリング
  ■その他の効果 インフラ設備費用の削減、
          街灯として近隣への貢献等の効果がある。

グランドデザインの概要

 太陽電池の丘は、東京大学柏キャンパスの南西角の交差点に面した広場として整備されました。
 この敷地には2008年4月現在、キャンパスの外れの南西角と言う立地上、電気等のインフラが整備されていないため、太陽発電のユニットを配置し電気を作り出しています。
 これ等のユニットは半透過性のガラスで構成され、夜間は照明のスクリーンとしてそれ自体が街灯と成ります。街灯が少ない交差点を明るくする事で環境・治安の向上に貢献しています。
 また、太陽発電ユニットの一部の基壇には太陽光発電で創られた電気を利用したポスターボックスが設置されており、開かれたキャンパスとして計画が進んでいる柏キャンパスの情報を外に向けて発信しています。

本システムの特長

1.経済性:
 太陽電池を使用した事によるエネルギ−の削減とインフラ設備を使用しない事で設備費の削減(敷地はインフラ未整備)

2.環境好適性(CO2の削減等)の向上:
 太陽電池使用による、燃料燃焼時のCO2排出量の削減。
 年間で2,130.304gの削減(予測値)。

3.使い勝手の向上:
 近接する交差点の暗さを改善する事による環境の向上と防犯上の不安感の解消。

4.快適性は向上するか:
 広場にし、一般の方に開放する事による、開かれたキャンパスの実現。
 電柱や配線の無い美しい風景の創出。

5.停電や災害時の備え:
 非常寺の蓄電ユニットからの電源の取り出しが可能。インフラ切断等の被害を受けない独立電源。

評価

当該作品は大学の敷地内に設置された「公共広場」と言う用途であり一般的な建築物とはその性質を異にします。
しかし、環境に好適な施設と言う面では一般的な建築物とも多くの点で類似点が有ります。

経済性の検討(新エネルギ−等の利用で単純な経済性を実現するのは難しい面が有る)

現在の一般的な太陽光発電の発電コストは45円/kW程度です。
(ソーラー発電の耐用年数を15年とした場合)
この発電コストは太陽光発電のパネルの耐用年数で大きく変化します。
仮に、太陽光発電のシステムの耐用年数が30年程度の保証があれば発電コストは23円/kWでありメンテナンスの費用等が低減された場合は十分に採算が合います。
今回の作品は送電等のインフラが整備されていない地域での計画であるので一般的な電力の調達コストと比較する事が無意味であると言う面と、当該作品の効果が周辺に与える景観や夜間の防犯効果及び交差点付近の照明まで賄う多機能性で十分に設備費用を越える経済効果を発揮していると判断されます。

東京大学と言う公的な機関に設置されるプロジェクトでは単純に「経済効果」のみをテーマにした評価は馴染みませんが、この「太陽電池の丘」の作品は現在社会全体で推進させようとしている脱炭素社会の具現化に大きな影響を与えるものと推察されます。
太陽光発電と言うテーマでは有りますが、現実には周辺の環境に与える好影響や防犯上の面までの効果を考慮すれば如何にこの作品のコストパフォーマンスが高いか理解できます。

ソーラー発電をテーマとした施設で今回の受賞作品の事例の様な成功事例は数少ないものと推察されますが、今後太陽光発電等が普及して行く為には下記の様なグリーンエネルギ−に対する国の支援策やメーカーに依るシステムの充実が望まれます。

○グリーンエネルギ−発電システムの設置に対する国や自治体の助成金等の増額。
○グリーンエネルギ−の高価購入制度の整備。
○システム価格の現状と比較しての大幅な低減。
○システムの耐用年数の増加。

等々のグリーンエネルギ−普及の為の施策が功を奏しての脱炭素社会の実現が望まれます。

評価協力:
グランドデザイン・コンテスト技術事務局 富士プラント・アルコ(株)技術部 篠崎・劉/他

 


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